Philosophy

Philosophy

La Cave du Brocart の哲学

造り手の想いを、そのままに。
一本のワインが持つ背景まで理解し、良い状態のまま、飲む方のグラスへつなぐ。
「なぜ、この一本なのか」を、自分の言葉で説明できるワインだけを扱いたいと思っています。

ワインを意識した最初の記憶

私が初めてワインを意識したのは、大学に入ってからでした。近所の酒屋でワインを買い、家で飲んでいました。

ある日の夕暮れ、グラスに注いだ赤ワインに光が差し込んで、その色があまりにもきれいに見えたことを、今でも覚えています。たしか、シャトーヌフ・デュ・パプだったと思います。

ボルドーもよく飲みました。当時は今とは価格感も違い、ACマルゴーでさえ、大学生だった自分が手を伸ばせるものがありました。

味のことを、今のように理解していたわけではありません。それでも、グラスの中の色、香り、土地の名前。ワインには、他のお酒とは少し違う世界がある。そんなことを感じ始めていました。
大学在学中には、2年間パリへ留学しました。最初はホームステイでした。
ホームステイ先のマダムは、お酒にとてもこだわりのある人でした。食事の時間には、アペリティフからワイン、そして食後のディジェスティフまで、いつも自然にお酒がありました。
一度、せっかく開けたワインを口にしたマダムが、「これは違う」と言って、そのワインを捨て、別のボトルを開けたことがあります。
当時の私は、ブショネ(コルク由来の劣化臭)という言葉さえよく知りませんでした。本当にワインに欠陥があったのか。それとも、マダムが思っていた味と違っただけなのか。今でも分かりません。
でも、その出来事は妙に心に残っています。ワインは、ただ飲めればいいものではない。飲む人の中に「こうであってほしい」という感覚がある。そのことを、私は理屈より先に知ったのかもしれません。
ホームステイを終えた後は、パリのマドレーヌ近くにある屋根裏部屋で暮らしました。

場所だけを聞けば一等地でしたが、建物のエレベーターで最上階まで上がり、そこからさらに階段を使って屋根裏部屋まで上がるような生活でした。決して贅沢ではありません。

家では、その時々でいろいろなワインを飲んでいました。どんな銘柄だったのか、今ではほとんど覚えていません。

ただ、友人の家に集まった時によく飲んでいたミュスカデのことは覚えています。安くて、辛口で、みんなで気軽に飲める白ワインでした。

焼きたてのバゲットやブルーチーズと、安いボルドー。それだけで十分に楽しい時間でした。
そして、パリでワインを飲む時は、いつも誰かがいました。友人と食卓を囲み、話をしながら飲む。特別な一本でなくても、その時間そのものが楽しかった。
今振り返ると、どんなワインを飲んだのかより、誰と、どんな時間を過ごしたのかの方がよく覚えています。

私にとってワインの原点は、たぶんこの感覚です。

ワインを「学問」として知るより前に、
ワインが人と人の間にある豊かさを知ったこと。

2010年、土に触れた日から

山梨の葡萄畑での収穫風景
山梨・塩山の葡萄畑
私とKisvinとの関係は、ワインを仕入れるようになってから始まったものではありません。

始まりは2010年。mixiの小さなスレッドで交わした言葉から、物語は動き始めました。

当時ソムリエとして働いていた私は、仕事が終わると電車を乗り継ぎ、山梨・塩山の畑へ通っていました。まだワイナリーが形になる前。土に触れ、シャルドネを育て、ワインが生まれていく過程を間近で見てきました。

2013年の初ヴィンテージ。2015年には自身のワインバーを開き、その後も関係は続いています。

ワインの話だけではありません。時には食事をし、時には共に釣り糸を垂らす。そんな時間まで積み重ねてきたからこそ、Kisvinは私にとって単なる「取扱ワイナリー」ではありません。
畑からボトルになるまでに、どんな考えがあり、何を目指して造られているのか。その背景まで含めて伝えたいワインです。

ワインを選ぶということ

ワインバーのカウンター
10年間立ち続けたワインバーのカウンター
卒業後は東京の宝飾品会社で経理として働き、その後、名古屋へ戻り、ワインを扱う飲食店でマネージャーを務めました。

その中でソムリエ資格を取得し、さらにドイツワインケナー、上級ケナーへ。独立後は、自身のワインバーを10年間経営しました。

毎晩カウンターに立ち、さまざまなお客様と話しながら、ワインを選ぶ時間を重ねてきました。
そこで強く感じたことがあります。
ワインは、知識が多ければ多いほど楽しめるものではありません。同じ一本でも、強く心に残る人もいれば、そうではない人もいます。
だからこそ大切なのは、点数や知名度ではなく、

その人が何を「美味しい」と感じるのか。
そしてもう一つ大切なのは、そのワインを誰と、どこで、どんな時に飲むのかということです。
同じワインでも、一人で静かに飲む夜と、好きな人と食卓を囲む時間では、感じ方は変わります。旅先で飲んだ一本が忘れられないことがあるように、ワインの記憶には、その時の景色や会話や気分まで一緒に残ります。

ワインを選ぶ時間は、旅行の計画を立てる時の感覚に少し似ています。

「このワインを開ける時間は、きっといい時間になる」

そんな小さな幸福まで、一緒に選んでもらえたらと思っています。

誰と飲むのか。どこで開けるのか。どんな料理を並べるのか。どんな一日の終わりに飲むのか。

行く前から、その時間を想像して少し嬉しくなる。ワインを選ぶ時間も、そんなふうであってほしい。
一人で飲む時でも。愛する人と飲む時でも。大切な友人と飲む時でも。
ワインバーを経営する中で、WSET Level 3も英語で取得しました。資格や知識は、私にとってワインを理解するための道具です。
お客様に本当に届けたいのは、難しい専門用語ではありません。

「なぜ、このワインを選ぶのか」
「どんな時に飲んでほしいのか」
「どんな料理と合わせると、もっと美味しくなるのか」

そんな、実際に飲む時間につながる言葉です。

この店に並べるワイン

La Cave du Brocartの品揃えは、多くありません。世界中のワインを網羅することも目指していません。

長く向き合ってきたもの。実際に飲んで心に残ったもの。そして、自分自身が「なぜこの一本なのか」を説明できるもの。

そんなワインを中心に選んでいます。現在、その柱になっているのが、Kisvin、California、Rieslingです。

Kisvin

Kisvinのワイン
長く向き合ってきたKisvinのワイン
Kisvinは、La Cave du Brocartの原点です。畑に通っていた時代から、ワインが生まれ、現在に至るまでを見てきました。
だからKisvinのワインを、「美味しいから」という一言だけで紹介したくありません。
なぜこの味わいになるのか。なぜこの品種なのか。畑や醸造で、何が行われているのか。

その背景を知ることで、一杯のワインはもっと面白くなると思っています。

California

カリフォルニアワイン
店主が選んだカリフォルニアワイン
カリフォルニアワインに惹かれる理由は、分かりやすい美味しさと、その奥にある多様性です。
豊かな果実味を持つ力強いワインもあれば、海の影響を受けた冷涼な土地から生まれる、繊細で緊張感のあるワインもあります。
同じカリフォルニアでも、ナパ、ソノマ、セントラル・コーストでは、ワインの表情は大きく変わります。
最初の一口から「美味しい」と感じられる親しみやすさがありながら、産地や造り手を知るほど奥行きが見えてくる。その両方を持っていることが、カリフォルニアワインの魅力だと感じています。
知名度だけで選ぶのではなく、その一本に、選ぶ理由があるか。それを基準にしています。

Riesling

リースリングは、私が長く惹かれてきた品種のひとつです。ドイツワインケナー、上級ケナーを学ぶ中でも、多くのリースリングに触れてきました。
リースリングの面白さは、一つのスタイルだけでは語れないことにあります。辛口から甘口まで。軽やかなものから、長い熟成に耐えるものまで。産地が変われば、香りや酸、質感も大きく変わります。
そして何より、料理との相性が広い。和食、魚介、豚肉、スパイスを使った料理。日常の食卓にも自然に寄り添います。
一方で、飲み比べれば土地や造り手の違いが驚くほどはっきり見えてきます。

難しそうに見えて、実はとても身近。

それが、私がリースリングを扱い続けたいと思う理由です。

なぜ、このワインなのか

Kisvin、California、Riesling。産地も、品種も、スタイルも違います。けれど、私の中では一つの共通点があります。

「なぜこのワインなのか」を語れること。

流行しているから。評価が高いから。価格が上がりそうだから。それだけを理由に、ワインを選ぶことはありません。

自分で飲み、誰に飲んでほしいのかを考え、どんな料理と合わせたいのか、どんな時間に開けてほしいのかまで想像できる。

そんなワインを、この店には並べています。

「聖域」を守るということ

ワインは、ボトルに入った瞬間に完成するわけではありません。その後、どのような環境で保管され、どのように届けられるかによっても状態は変わります。

だからLa Cave du Brocartでは、保管環境や配送にも気を配っています。それは単なる管理上のルールではありません。

畑で葡萄を育て、醸造し、一本のワインに仕上げた造り手への敬意だと考えています。
造り手が意図した味わいに、できるだけ近い状態で届けること。それも、ワインを販売する側の仕事です。

「この一本を、良い状態で受け取れた」

そう感じていただけることを大切にしています。

あなたのための一本を

ワインは、詳しくなくても楽しめます。

ただ、選択肢が多いからこそ、「何を選べばいいか分からない」ということはよくあります。

そんな時は、無理に一人で選ぶ必要はありません。
好きな味。合わせたい料理。飲む相手。予算。「赤が好き」くらいでも構いません。
そしてできれば、そのワインを、誰と、どこで、どんな時に飲みたいのか。そこまで想像してみてください。
一人でゆっくり過ごす夜。家族との食卓。大切な人との記念日。友人が集まる休日。少し疲れた一日の終わり。
ワインは、その時間の主役でなくてもいいと思っています。ただ、その場にあることで、少し会話が増えたり、料理が美味しく感じられたり、その日のことをあとで思い出せたりする。
そんな一本を届けたい。

La Cave du Brocartが目指しているのは、たくさんのワインを売る店ではありません。

「この一本を選んでよかった」
「この時間を過ごせてよかった」


そう思ってもらえる店でありたいと思っています。

自分で選びたい方には、一本一本に選んだ理由を。何を選べばいいか迷う方には、SOMMELIER ONLINEでご提案を。
造り手から届いた一本を、良い状態で、きちんと理由を添えてお届けします。
そして、その一本を開ける前から少しだけ楽しみになるような、

これから過ごす時間への期待まで、一緒に届けられたらと思っています。

SINCE 2010. AUTHENTIC KIZUNA.

La Cave du Brocart
店主 寺尾